処女懐胎/天野茂典
 
  
  

  ぼくは産道から生まれてきたことが
  いやだった 仏陀のように
  キリストのようにぼくは人と違って
  生まれてきたかった あまりにも
  人間が生々しすぎて 羊水だの
  出血だの 胞衣だの 生理的な
  誕生に 悪意をもっていた
  マリアの処女懐胎も眉唾もので
  好きではないが まだ清潔感が
  感じとられた ぼくは宗教的な人間でないが
  ぼくの出生にかかわる人間的なあまりに
  人間的な 誕生は ぼくをゆううつにした
  ぼくのなかの透明感が 純粋培養の
  土壌を育てたのかも知れない
  ぼくは人間がきらいなのだろうか
  人間
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