影のない犬/木屋 亞万
 

水色ストライプのひさしの向こうに
ぼんやりとした青空が広がっている
目の前に広がる防波堤
空の青が海の青を映したものなら
空気は随分とくすんでいる
陽射しに透けているこの小屋根の方が
何倍も明度の高い青であると感じる


  犬は色がわからない
  軒先ではぁはぁやってるこの犬も
  空と海を熱心に眺めているが
  その色の純度は知覚できていないはずである
  それでも毎日店番をしているということは
  空と海の吸引力は人間に限ったものでないということだ


かもめが飛んでいる
漁のおこぼれが目当てらしい
あるいはかもめも魚を取るつもりなのか
とにかく漁
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