夜中の電話/綿花
 
今にも閉じかけようとする瞼をこじ開ける
なんとか携帯電話のディスプレイを覗き込む
ぼんやりとして働かない頭の中に 君の名前が染み渡る

「寂しかったの。声が聞きたくて」

寝起きで掠れた声で 僕は曖昧な返事をする

「そう」  ……嬉しいよ

ベッドに起き上がり 半分目を閉じたまま 手探りで煙草を探す
今度はライターが見つからない
煙草をくわえたまま 少しだけ さっきより目を開けて辺りを探る

「今日はごめんね。……怒ってる?」

口がふさがった僕は返事をできず
その間に打ち出された彼女の疑問を慌てて打ち消す

「そんなことないよ」  ……僕もごめん


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