声/
草野春心
ポケットに、
空っぽをまさぐる。
耳をすます
……ふりをする。
見つめたって、さ。
その空は上にあって。
その海は遥かにあって。
ただのまなざしは、
けして届かないもの。
アルバムに、
面影をさがす。
指でなぞる
ただ、ひらべったい。
話したって、さ。
あの友はすでに去って。
あの夢もすでに散って。
放るような声は
ゴミ箱に、ポイ。
*
街は今日も
漂白な奴らが、
漂白している。
見え透いた足音、
風にほどけて。
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