声/草野春心
 



  ポケットに、
  空っぽをまさぐる。
  耳をすます
  ……ふりをする。
  見つめたって、さ。
  その空は上にあって。
  その海は遥かにあって。
  ただのまなざしは、
  けして届かないもの。



  アルバムに、
  面影をさがす。
  指でなぞる
  ただ、ひらべったい。
  話したって、さ。
  あの友はすでに去って。
  あの夢もすでに散って。
  放るような声は
  ゴミ箱に、ポイ。


   *


  街は今日も
  漂白な奴らが、
  漂白している。
  見え透いた足音、
  風にほどけて。

[次のページ]
戻る   Point(2)