肉じゃが/
窪ワタル
が細い波のように鈍く光っている
遠浅の海だ
それでもずっと
ずっと歩いて行けばきっと
(溺れてくれ)
リビングのテーブルで
煙草を吸いながら
帰りに百円ショップで買った便箋に
「退職願」と書く
醤油挿しの隣で
ハルシオンの白が
婀娜っぽく笑っている
怪物と暮らして行く
これからもずっと
かあさん
肉じゃがって
どんな味だったけ
もうまるで覚えていない
俺は母を殺したのだ
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