ときどき別れを/寺岡純広
 
には旅行にも出かけ、夜には君を抱く
そこには世間の恋人、夫婦と同じ生活がある

結婚を約束し、あと数ヶ月後には新居を定め、一緒に暮らす予定がある
アルバムに貼る写真は数え切れないほど貯まり、2人の歴史はもうはじまっていると言ってよい

けれど、「本当にこれで良いのだろか」
独りに戻るとき、自問自答を繰り返す
僕より君を幸せにできる男は世界に幾人もいるのは、確かなこと

昨日、僕の部屋で歌劇『椿姫』を一緒に聴いた
オペラの結末を知ってか、知らずか君は「乾杯の歌」がひどく気に入ったようだ
僕にはもっと好きなアリアが他にある

僕の未来で喜劇を観ることは少しも予想できない
なぜなら既に悲劇にもならない愚かな人生を一度終えているから

それでも、君は僕と結婚できるのか
話さなけばならない大切なことはたくさんある

けれど、僕と一緒にいるときに見せる君の笑顔に決心が鈍る
すべてを話すべきか、このまま成り行きに任せるか
君の魅力に負けて、この悩みを忘れたらどんなにかいい




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