混濁のひと/恋月 ぴの
 
フランス式整形庭園のプラタナス並木
平日の昼下がりは閑散としていて
僅か先で展開する物々しささえも幻影のように感じてしまう

たとえばダリだったらどう描くのだろう
整然としたプラタナス並木から望む
英国風景式庭園の芝生に展開する迷彩服の男たちは
これからグランドホッケーでも興じるかのように
カーキ色の軍用車両の脇に整列していた

サルバドール・ダリなら描く
蛞蝓のように弛緩した懐中時計の断末魔と
無機質なまでに蒼い空の下で愛を確かめ合う毛蟹たちの姿


(三)

「ぴーちゃんはまーちゃんと寝たの?
わたしは寝たわ」

一瞬勝ち誇ったことばかと思ってみたものの
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