混濁のひと/恋月 ぴの
(一)
「ここも戦場になるのね」
キキはちょっと悲しそうに呟いて
刈り込まれた芝生の向う側に
迷彩服の男たちを認める
忙しく移動式対空レーダーを組み立てていた
目的のためなら一番大切なものさえ捨てられる男たち
(二)
新しいコートが欲しいと言うキキに付き合った後
大木戸門をくぐり新宿御苑をそぞろ歩く
キキは黒のハイネックに皮のベスト
そして格子柄のショートパンツにブーツを合わせていた
おいらと言えばまーちゃんの編んでくれた
ラスタカラーのマフラーを首に巻き
砂利道に足を取られそうになるキキの足元を気遣う
「ひよこさんって優しいのね」
フラ
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