母の花友だち/寺岡純広
 
 母が脳梗塞で入院、手術したときのことだ。幸い一命はとりとめ、面会が許された日、母の花友だちを紹介され、病院に同行してくれた。

 母はまだ意識がはっきり戻らず、痴呆などの後遺症が出るという。どう対応してよいか迷う私を救ってくれたのは、母の友だちだった。お見舞いにもらった花のことをはじめ、母が手塩にかけた家の花々、花壇の話に花が咲く。もともとその方は、母の花壇を通りがかりに見て、そのすばらしさに感心し、母に声をかけたことから友だちになったそうだ。

 私は母にそのような友だちがいてくれたことを心から感謝し、涙が溢れそうになった。今はもうその頃の家から引っ越し、花壇がどうなっているか、知る由もない。母もこの3月に亡くなった。

 しかし、そこにあった花々のことは母の花友だちや私、何人かの胸の中に今も鮮やかに残り、咲き誇っている。それは、私が母を思い出すとき、一番懐かしい記憶ともなっている。


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