赤児と緑児/木屋 亞万
首の長い扇風機を買った
赤い羽根を気に入った
風に乗る、生まれたての
プラスチックの臭い
わくわくと吹く風
私はその扇風機を
赤児と名付けた
夏の夜、
仕事机で読書する
私の横で回り
ベッドで眠る
私を見守って回り
静かに風を送り続けた
夏が終わり
扇風機を分解し
押し入れにしまう前に
雑巾で汚れを
拭き取っていたら
赤い羽根を拭いたとき
塗装が綺麗にとれて
緑の葉っぱがでてきた
黄緑の葉脈が
緑の光沢を引き立たせて
これはこれでまた、良い
私は赤児から緑児に
扇風機を改名することにして
せっかくだからそのまま
部屋に置いておくこと
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