「逃げる」/小原あき
 

耐えきれずに物語を書いたのです
だけど、誰も読む人はいなく
むなしくて泣いていたので
逃げていたことを気づかないふりをしました


ある時は怒りから逃げました
耐えきれずに捨てたのです
一からやり直そうと
心が軽くなったので
逃げていたことを気づかないふりをしました


ある時は逃げることから逃げました
耐えきれずに立ち止まったのです
「逃げる」を見つめていたら
身体の中心のかさぶたが剥がれたので
逃げていたことを気づかないふりをしました


青い空を見上げていると
大好きなはずなのに
たまに逃げ出したくなります





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