意識が飛ぶということはつまりそれだけの/木屋 亞万
 
新鮮すぎて盛られた皿の上でなお、ぴちぴちしている鯛の煮物
洗剤で洗われた後、絵の具で鮮やかなピンクに炊き込まれたご飯
を食べた途端、生きている意味がわからなくなって
ちょっと重たかったけれどテーブルをひっくり返し
(ピンクの生臭い舌で) 「こんなもん食えるかー」と叫んだ

どこをどう走ったのか覚えていないが
気がつけば暗い穴のなか汗をかきかき足を動かし
かすかに見える光を目指した
トンネルを抜けたらそこは百年後の未来だった

寒かった(バナナとリンゴで野球ができそうなくらい)
人類は元気そうに歩いていた(全裸で)
目の前を歩いていたチンパンジー風の雄を
丸坊主の雌が蹴
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