私は石である。/
佐々宝砂
人の手によって動くものでない。
しかし私は風にも転がる。
雨に打たれれば簡単に摩耗する。
宝ではないから価もつかない。
私は石である。
ただ一度限りの生誕しか知らぬ、
ただ一度限りの私である。
河原でうぶめが鳴く、
私は優しく歌いかける、
ここにおいで、石になろう、
おまえが血まみれだとしても私はおまえを抱く、
石となれ、石となって、
静かに河原に佇んでいよう、
きらめく雲母を身体に飾ろう。
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