夜汽車/
沢村 俊輔
夜汽車が湖のほとりで
誰かを待っている
夜は静かに寝ているだけで
何も気づいていない
誰が予約したのか
夜汽車の切符を持ち
風がやってきた
誰が破いたのだろう
座席番号の部分が欠けている
風は自分の席を探せぬまま
車内通路を通り抜けてしまい
そのまま湖のほとりに出てしまった
風は
そよそよと
空席になったままの自席の番号を
森の木々たちに
ずっと尋ね続けている
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