真夜中にダンクシュート/木屋 亞万
 
っていたホームレスのおじさんに愚痴をこぼした

普通科なんか行きたくない
学年の檻から早く抜け出したい
やっと義務教育が終わるのに、どうしてまだ学校に行かなくてはならないんだ
と言うと、
おじさんは珍しく声を出して笑った後、目の端に涙を溜めて「帰れ」と言った

それでも僕がそこにいると
「お前が帰らんなら、私が帰る」とおじさんの家は目の前なのに、
バスケをしている人たちに声をかけ、どこかに行ってしまった
試合が一つ終わると、いかつい兄さん達もあっさりと帰ってしまって、独りになった
始めてここで、一人
多分待っても誰も来ない
寝そべると空に、満月
月しかない
明るすぎる電灯の下
バスケットボールを拾い上げ
さっきの兄さん達の見様見真似で
思い切りダンクした

 夜が明けて、帰ろうとする僕の背中に、
「また来いよ」と声が聞こえた
かっこ悪くうなずいた後、また歩き出した

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