転がるひと/
恋月 ぴの
び
どれどれと覗き込んだキキの笑顔
恋人同士
傍から見ればそんなふたりにも思えた
(六)
開店準備を終えたナジャの店内に
マルのピアノソロが流れ
おいちゃんとふたりだけの大切なひととき
居抜きで引き継いだ黒いカウンターの上には
どんぐりの実ひとつ
まーちゃんの掌から転げ落ちたはずの
どんぐりの実
唸り声にも似た音がして
あの闇はこの店に横たわる深い闇と繋がっている
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