無いものねだりです/ちりめんチャコ
 


今住んでいるのは海のない街
淀んだ大きな川が幾筋も流れる
同じ天気図を見て
あの街に降っている雨は
この街にまで来ない
代わりに黒アゲハがやってきて
夏の終わりのカラミンサにはシジミチョウとミツバチ、アシナガバチ
戸建の小さな庭は楽園のように草木を茂らせて
色んな芋虫の名前も覚えたけれど
永遠に満たされない渇きがあるということ
また思い知らされている

もちろん降雨量とは関係なく

庇らしきものがほとんどない今度のベランダからは
夜空のてっぺんを探り当てることができる
首がイテテとなりながら
遠く離れても同じ星同じ月を見ているね
なんて言い合った人はもう本当に遠くどの空の下にいることやら
それでも見上げた空には同じ星同じ月だから呆れる

どこが一番自分に似合っているかって
問いかけ続ける
流行色を追うように
不毛と知りながら
次のどこかを探してしまう
草木はこんなにも根を下ろしているのに


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