夜明け/草野春心
ではもう一度!」)
台風が、質問を運んでくる。
電話は?
――かけない。
希望は?
――食べられない。
遺書は?
――死なない。
恋人は?
――生まない。
台風なんて、おあつらえ向きだ。
このまま、なんて思わないよ。もっと、
もっと吹いてくれ。
月を、砕くほどに。
陽を、砕くほどに。
子どものころ、僕は、何かに成れると思っていた。
「君は君だよ」なんて、心外だったな。
人は、人は、自分自身にだけは、
絶対に成っちゃいけない。
絶対
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