器と器/木立 悟
 





右まわりに触れられ
そこにいると知る
笛の音の房
こぼれる鈴の輪


細い光がたなびき
夜を分けるのではなく
既に分かれて在る夜を
ふいに消えた家々を描く


微動する熱
器のなかの
器のかけら
忘れられるのに十分な距離


鉄は火照り
鉄は冷める
鏡の裏に鳴る鏡
映るものの目をふちどる錆


渡しそこねて根づいた光
窓辺を手招く夜になる
仮面の門へ至る道のり
曲がり角に消えてゆく背


氷の花がつづいている
鏡の前の灯火を消す
器のかけらに水をそそぐ
あふれてもあふれても止まない傾き


周りだけが速くな
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