靴音とブルース/かのこ
 
鉛色を映した屋根を幾つか越えて
街に響く、錆び付いたレールの
軋む音、
今日も始発の出る頃
そこでやっと夢から覚める
床に就く

この街に雨が降ったのは
何日前のことだっけ

高層ビルが鬱蒼と生い茂った都会の真ん中の
まるで巨大な生き物みたいな歩道橋の上で
小雨の中、誰一人傘をささず歩いていた
そこの欄干から、行き交う人や車の群れを見下ろして
誰かを待っているのだろうか、あのひとは
耳を澄ましているようにも、見える
誰かを想っているのだろうか

あたしは、
濡れた地面を合わない靴で踏んで
ただ立ち止まるのが怖くて仕方がなかった
この靴さえ脱げれば
このま
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