夏から混沌/ふもと 鈴
 
誰もいない書庫の静寂身に注ぎ独りで生きる怖さかみしめ

虫の音を聞きながら下る階段で秋の気配とぶつかる足元

コトコトと電車が線路を行く音に別れの余韻も削られてゆく

夜に乗る電車は車窓が真っ暗で外の世界と遮断されて

難しいことばかり思う癖ゆえに人生まるまる失っている

単純に風景の中とどまってこれから先はしらんぷり

素直にと、幾度かしれず口にしていまだ自分を放って逃げる

いつのまにつまった距離を置き去りにさらにぐんと遠くなる背

輪郭の鋭い音は鳴りやまず世界は奥行き保たれている

長々と感性咲かす映画みてビールを飲んで帰りたくなる

細道を上がりてく
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