四方八方/ふもと 鈴
 
檻の中にいるみたいにみつめている張り付く嘘のつめたい
足音はどうしたって響かせてはダメで
時間に蛍光塗料を塗りたくってやる
けれど、
下をむいて歩くばかりで、人ごみの中
目立つ蛍光に笑い声がする
歩くな、走れ、走れ、歩け
歩くなんて最初から知らない
災難でしかないの

南へ、
「人ごみから避けて池の端につかまっているから、頭から足まで海へと投げ込んでみて」
殺されたいと思うから、生きている心地のする

大きなリュックサック背負っても、必要なものは何ひとつ
人ごみにあって、
いつだったかの波紋の上を頭の中でたどっている
それから、
自分の死んでしまうのを
バカみたいにつぶやいている

頭の中で描かれる輪に、夢中になった優しさだけが滑る
ゆっくりなぞってもう一度、ぐちゃぐちゃにしてみなさいと
自分に、命令しようと、
ぶつかった誰か


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