不通/本木はじめ
 
煙草を灰にするように
死に体の鴉たちが一斉に飛び立ったので
空が夜みたい
狭い空ばかり見ていたから
わからなくなるのです
こんなとき
天井がもうきついそうなので
僕は唾を飲み込んで
君のくれた花瓶を抱きしめる
庭の草むらに埋もれている
井戸は涸れてしまっているので
どっちにしても暗いのです
君はずっとそんな闇の中で
皿を割り続けているね
白くなってからも毎晩
音さえ粉々になってるよ
耳が散らかってしまうから
もう僕は鴉の死骸を求める者になるだろう
上空から黒い鳴き声が
低音で降ってくる
嬉々として空を見上げればそう
夏の曇り空
ぼくら一緒に住んでいたね
この羽根だらけの廃屋に
今さら
黒電話が鳴る


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