夕日夕食/木屋 亞万
 
まだ少し暑さが残るので
冷房のスイッチを入れる
と、角が取れた熱は
あっさりと部屋を去り
すぐに肌寒くなる

ひと夏の情熱が
夕日のごとく悶えながら
大地へと沈んでいく
ヤカンがゴツゴツと煮え
茶葉を蒸らす蓋の奥
台風が歩速で移動している

去年旅先で手に入れた
和風のマグカップに注ぐ
湯気の白い糸筋が
絡み合おうとして消える
取っ手が取れたその器は
風が去り和の心を得た

熱いお茶が喉を温め
吐く息が丸い熱を持つ
楽しさの終わる味がする
今年の夏は何もなかったのに
ああ、そういえば空腹

久しぶりに肉が食べたい
夕日のフィレを食べよう
そう
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