メン・イン・ブラック/ザ・凹凸目目
がかりに思い出すことが出来る
30分分の暗闇を、保存することが出来た
彼女の部屋で眠ってしまっていた
夢を見ながら目を覚まし、(いつ目を開けたのだろう、まだ目をつむったままかもしれない)
まぶたの裏での出来事を彼女に語って聞かせる
日本語になっていない僕の言葉に彼女はフと笑い、その瞬間僕は明るい世界に浸食された
まぶたの裏の言葉にならない映像が、一瞬にして「見た」ことのある映像に置き換えられていく
僕は日本語で、彼女に夢の話をすることが出来るようになっている
暗闇を盗んだのは、光だ
暗闇での経験を、光は一瞬にして奪い去った
かろうじて言葉に置き換えて記憶した暗闇での経験も、「見る」ことに縛られた光の理屈に塗り込められる
本当は暗闇で、なにを「見た」のだろう
言葉に置き換えることで失われる、夢の世界
けれど言葉に置き換えなければ、覚えておくことすら出来ない
暗闇で「見た」ものを、返してくれ!
目を開いた状態(光)から目をつむり(闇)目を開ける(光)
光に挟まれた闇は、光によって盗まれる
まばたきの間の暗闇を、僕たちは奪われ続けている
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