芋粥/木屋 亞万
 
朝焼けは夕焼けに似ている
赤ん坊と老人が似ているように
どちらも生命の底力に満ちている
朝の6時半に店のシャッターを開け
芋粥を作る母さんの割烹着
糠床を掻き交ぜ茄子を一本取り出し
畑の歪曲した胡瓜を新たに漬ける

米もサツマイモもいい具合に
とろとろに煮詰まり、茶の香が
隠れきれずに現れてくる
しおらしい紫の茄子の小皿
小さな土鍋の粥を二人向き合って食べる

朝は粥に限るなぁと呟くと
はふはふと笑う、歳を重ねて
より猫に近付く母さんの舌
ああもう母さんではないのか
娘はもう家を出たから
この家には再び二人しかいなくなった
新婚の頃が懐かしいな、
ご飯とみ
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