雨に打たれながらも立ちこむ釣り師/北村 守通
水面に
拡がるカァテン
一つ
二つ
三つ
割れる
俺は今
間にあって
どうしたものか
思案する
俺の脚は
久し振りの故郷の質感に
くつろいでいる
俺の腹は
しきりと帰りをうながしている
俺は
羊水には戻れない
人は
水中には戻れない
水面に
拡がるカァテン
一つ
二つ
三つ
はるか彼方で割れる
二つ
ついでに
跳ねる
投げ込んだルアーに
雨が命中す
俺のタバコに
雨が命中す
鼻水と一緒に
唇こじ開け進入する
雨が進入する
俺の体内に
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