絵描きの長い旅/ふたば
 
れば
筆を持ってなくとも指の腹には
絵の具が染み付いてるかもしれないし
イーゼルやパレットを持ってなくても騙されてはならない
大切なのは目の中をよくよく覗いてみる事
ろくでなし一文無しなまけ者に見えていても
大酒呑みの薄ら笑いを浮かべていても
瞳孔の奥に鋼鉄の灯りを隠してあって其処へ
森を吹き抜けるはずの風を吸い込んでいってしまうし
時間を色付きの派手な訳ありにしてしまい、おまけに
道端に絵を描いていた面影まで残していってしまう
まして目に見えない
言葉のまるで通じないものを残していこうなどと

絵描きは追い払え
絵描きは街に入れるべからず
ひとり許せばすぐ三十人に増えると思え
此処にはお前が描くものなど何ひとつないと
付け加えるべきものも
受け止め直すべきものも、何もないんだと
消しゴム代わりのパン切れをぶつけてやれ
中に入れさえしなければ
奴等は勝手に外でのたれる
音楽家だとか詩人だとか手品師だとか名乗る
タチの悪い連中と同等に扱え




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