サンドペーパー/モリマサ公
 
めない
絶対に傷つけないために
ずっと抱きしめて
抱きしめてるのにきがつかないままの姿勢で
コーナーを曲がり
枝から葉っぱが全部落ちて
それを踏みながら横切って歩いて
人々がティッシュペーパーみたく柔らかい
ノンフィクションな
穿たれたいくつものクレーターが残像として痛み
湿った壁にシミが浮かび上がり
俺たちは地上の夜という無数のくぼみに指を突っ込み
硬いガラスの言葉を覚えて
サンドペーパーを舐めて
ざらざらな新しい言葉を覚えて
ぎざぎざの新しい言葉を覚えて
正しいセリフを吐きながら
こなごなに砕けて
砕けながら
焦燥感に腹を蹴られ
挫折に身を切られながら両腕をのばし
手のひらをひらく
真実はいつだって指の隙間から逃げて
あたしたちはそれでも
新しい言葉を覚えて
新しい名前で呼ばれて
新しい名前で呼ばれる
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