シカゴの不動明王/
吉岡ペペロ
シカゴでは仕事の合間をつくって
かならずミュージアムにゆくようにしている
そこにはお気に入りの
不動明王がいてくれるからだ
こぶりの黒っぽいそれは
祈りを込めて眺めたところで
僕の胸になぞ座ってはくれない
僕はそこを立ち去るとき
じぶんの背中のそれにも
この不動明王を見せてあげることにしている
こころのひとつひとつが
長続きしない僕の情熱を
あぶりだしてゆくような気がする
振り返らない
僕はシカゴの不動明王にさよならする
戻る
編
削
Point
(1)