詩人と海/アヅサ
生まれてすぐに言葉を食べた
降る雪のように冷たい言葉
それは小指の爪のように
やわらかく甘く
そっと僕の心臓に住まった
なんだか涙が出そうで
手のひらを握ったりしていた
つぼみが開きそうな夜に
草をついばんで眠った
海が見たいと歩き始めたのは
まぶしい朝がきてから
ひばりが鳴いて花が咲いた
揺らいでいると見えないもの
僕にはなにも見えなかった
世界には潮騒があふれていて
そのなかで神様も揺れる
僕は歩いている
海についたらそこで終わりだ
生まれたばかりだった僕は
言葉をつなぐことを覚えた
ざわざわの海で歌をつくる
すべてが透明な青色で
僕の涙も青かった
つぎに目を閉じたら最後、
僕の爪先からすこしずつ
海に沈んでいくみたいに
手放していけばいい
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