呼鐘/木立 悟
 




手首をすぎる風の先に
向かい合う双つの枯れ木があり
雨に雨を降らせている



夜が増すごとに
熱は辺をゆく
遠くも近くも ただ打ち寄せる

朝の裾が笑い
見えなくなる
はざまはにじむ
雨ににじむ

幸福を差し出し
ゆがみを得る
軌跡に実る火
燃す音のなか
燃されぬもの

闇のなかに
闇の穂があり
闇より暗く
水を集める
小さな器の
ふちを照らす


母に盛られた毒を吐き出し
自ら選んだ毒を呑むとき
羽は生まれ
羽は生まれ 空を焼く

やさしいものは毎日変わる
やさしいものは見つからない
やさしいものはどこにも
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