溶ける、解ける、部屋の/霜天
冷凍庫から取り出した氷の
溶けていく音が響いている
ちりちり ちりちり
静かな部屋に染み渡っている
窓の中では雲の
輪郭と輪郭とが
混ざり合いながら変化している
終わらない終われない消えるまで
いつまで線は繋がっているんだろう
螺旋階段の下で向日葵が咲いた
上昇気流を繰り返す坂道
カーテンが大きくゆれると
グラスの中でカランと傾いた
ちりちり ちりちり
いつまで音は繋がっているんだろう
その部屋は溶けていた
その部屋は解けていく
朝に昼に夜に、切れ切れの言葉を
喉の奥でひとつに繋げながら
誰に伝えるんだろう
言葉はどこへ行くんだろう
グラスに水が満ちるまで
ちりちり ちりちり
私はゆっくりと解けていく
螺旋階段の向日葵は西を向いていて
カーテンがふわりとゆれる
部屋で夏が始まって
部屋はひとつ暮れていく
グラスの中で沈む音がした
この夏はどこへ繋がっているんだろう
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