夜の手宮線/ヨルノテガム
 



この街は夜が早いので八時九時にはもう店は閉まりきる
昼のにぎやかな通りは明るい街灯を残し
ひっそり寝静まってしまうのだった
カップルの散策も終わり、客足もドンチャン騒ぎもなく
波のない運河に 街が染まっていくように
呼吸は静まり返る

秋の虫が線路跡となった手宮線沿いの公園に息吹を灯らす
テレビ音やBGMの途切れた場所、車の往来を遮るように
澄んだ僅かな風と鳴き虫は夜を詠う
走らなくなった電車の面影が街の中心を横切っているのは
遊びや隙間を思わせる
気候のよい夜はいつまでも
夜のベンチ、
夜の水飲み場、
夜のすべり台
は明かりに照らされ浮かび
雑草の生
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