ケンタウルスの夜/石瀬琳々
 
祭りの夜は渦巻く貝殻
空はずっと青かった
水の流れをずっと聞いていた
草を噛むとたちまち苦みが
口なかに広がって 星が銀河が
水のように押し寄せて来る


あれは
ケンタウルスのきらめき
旅する汽車の遠い響きを、聞いた
かすかにレエルのきしみを、聞いた
やって来る やって来る
ごらん 夜の彼方から


ざざざと風が湧き起こって
ああ 目をくらませる
ああ 足が心がもつれて
倒れた草の花に夜露が、光る
耳鳴りのように
笛の音がどこか遠くで


さようなら、ってつぶやいた
星の夜



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