言葉の砦/猫のひたい撫でるたま子
自分一人の秘密をつくらないと大人になれない
とよくいいますが、
人の秘密をひとつ知ることで、ひとつ甘い負担が増えます。
秘密は、口に出した瞬間から大量の小虫のように素早く床を這って、穴にもぐって見つけられなくなってしまいます。
そして時たま、それが入り込んだ人の脳内を駆け巡って、たまにぽろっと嘘に代わって出てきます。
また、抱えきれないくらいの嘘から秘密が生まれることもあります。
秘密は一人のものでないと、秘密という言葉にもならないから誰にも言ってはいけない。
誰の秘密を聞いてもいけない。
特定の人としか交わさない本来秘密であるはずの言葉は、使い方によって人を惑わす麻薬のようなものだと、恐ろしくなることがあります。
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