傘男/シャッターコーン
壊れた傘を 拾い集めている男がいた
破れて水が滴る傘
骨が折れてしまった傘
錆びて開かなくなった傘
雨の矢から 人を護る役割を
果たせなくなった傘は
存在価値すら もはや認めてもらえない
ある日 一人の男が思った
お前さん 何だか俺に似ているねぇ
それから男は傘を集め始めた
人目も構わず
来る日も 来る日も
傘を集め続けた
そうして集めた十万本の傘で
男は一艘の船を造った
見事に絡み合った骨組みに
カラフルな布を張り合わせた帆
風の頃良い 晴れた日に
港からどこかへ旅立って行った
男が去った街では
人々が海を見ながらこう言った
ああ 傘男が行ってしまったねぇ
今日から 壊れちまったこの傘を
どうしたら良いんだろうねぇ
遥かに後日
街の人は 再び傘男を目撃した
カラフルな機体の飛行機に乗り
彼は楽しそうに空を飛んでいた
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