ピアノ/草野春心
 



  ピアノの雨を浴びて
  君は待っている

   冬の駅を急ぐ、
   冬の人々。
   冬の空気を吸いこんで、
   冬の顔で笑っている。



  ピアノの雨を浴びて
  君は待っている

   君のための命が、
   君のために集める、
   君のための言葉、
   君のための心。



  ピアノの雨を浴びて
  君は待っている

   たった一枚の壁は、
   たった一枚の想像。
   たった一枚の透明な、
   たった一枚の透明な……



  ピアノが鳴っている
  ……真っ暗な僕の部屋で

   僕のための言葉、
   僕のための心、
   僕のための心、
   僕のための心……



   そこに、
   君が待っている。
   いつまでも。


戻る   Point(2)