おかえり/たちばなまこと
しまうのかな
アスファルトで手を振る
伊達めがねの人に泣きついたりした
けれども
けれどもね
まだ 日の長い午後5時 空の青に
東の空の青に まっさらな入道雲を見上げ
駅の前 商店街 女の言葉をきいた
「東京の空が、壊れちゃったんじゃないかしらと、思うの」
また 思うのは心臓のことで
声をかければ来てくれる人がいるの
遠くにも 思い出してくれる人がいるの
この まだ 得体の知れぬ大きな家の
私が家長じゃなくっても
短い両の腕を拡げて待っている
おかえり
おかえり
おかえりと
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