金魚姫/紫音
 
なんてものを始めたりもする
水槽の中が溶けたインクで濁っても
止められない
尾ひれも胸びれも傷ついてボロボロだけど
赤や黄や白や
色とりどりに見せかけてもいるけど
金魚は金魚
長い間交配を重ねて作られてきたように
きっと買い主に都合が良いように
いつの間にか作られてみたのかもしれない
そしてやはり金魚のように
買い主に価値があるものはなかなかできないのだから
縁日で売られるくらいになると相当に価値が低い
だから詩なんてものを書いたりする
(君は詩的を私的と誤解していると指摘してくれた君)
そう
そんなことは気づきたくもない
金魚な自分はいつまでも金魚なのだから
せめて水槽の中くらい
自由という檻の幻想を見てみても良いじゃないか
それが夏の終わりに消えゆく夢だとしても
消え去り際が泡のように美しくもないとしても
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