いつか どこかへ/木立 悟
 




小さな緑の段差を踏む
声は低く
応えられないままにすぎる


切り落とされた枝から
離れない虫
おまえは
おまえがどこへゆくか
知っているか


火の前に途絶えた道
火のなかへつづく足跡
片目にだけ映る音楽
水の奥の
ゆらぎとはじまり


岩の血 波の血
光の血 鉄の血
土の血 風の血
はざまに満ちて
満ちてゆくもの


銀のはざま
林のはざま
銀の林のはざまから
空へ降る火
空へ降る火
ただ蒼白い斜めの道


足元に声がいくつもひらき
定まりのないかたちを照らす
陰のなかに変わりつづける
降るものを浴び 響くかたち


陽が右眉と左目を梳く
道を無数のけだものがすぎる
背に小さなかがやきを乗せ
影の原へ
影を持たない原へ向かう


ある日ふいに絶たれた命と
対のかたちの器を鳴らす
いつかふるえがふるえ生むように
つづくことのないつづきとなり
いつかどこかへたどりつくように





















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