/猫のひたい撫でるたま子
楽がどこかから響いてくる
いつ聴いた音だろう
思い出せないけど、きっと私が大切にしていたリズムだ
リズムは心地よく、笑ってしまう
笑って、笑わせて
もう心が記憶してない感情が呼び起こされる
音楽を止めてください
プライドというつまんないものがあって、
そんなものはいらない
起点はどこから?
大切なものがあるからなんにも決められないんだよ
そう耳元でささやいた
走って逃げてゆく、風が巻き起こる
その風の足跡から小さくくるくると回って、
枯葉を、煙草の吸殻を、ベンチを、犬を、あなたを
巻き込んだものが遠くに高く放られた
取り残された私はなにもない宙をみつめる
あなたが残したつめ跡を感じる
思い出しては笑えない
想像しては忘れてしまう
あの趣味の悪い赤と、きもちの悪いあなたの優しさ
頭に描く色がぼやけて、滲んで、とけてゆく
その雫がたれて、小瓶に溜まる
遠く誰も知らない町ではその目薬が重宝していると、あなたはいった
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