終巡/木立 悟
 


旅立ちの道は心地よく
熱を残していたのに
いま太陽の下の冷たさは
独りの歩みを空へとつなぐのか



願いに満ちた足跡が
雨のなか消えることなくつづき
標のようにまたたいて
風に迷う声を導いていた



巡りを巡り
巡りをはずれ
巡る場所を失くしたものは
わずかな光さえ辛すぎて
草の闇へと向かったのか



道はなかば他の道に重なり
隠されたまま分かれてゆく
ほんとうの想いを言いよどみ
くちごもる声に覆われ
幾つもの淡い望みをたなびかせて



壊れてしまった命の国に
壊れた物と壊れた声がたどりつき
ふたつでひとつのうた歌うとき
土の熱さ
独りの冷たさ
迷うものたち
草の闇たち
巡りつづけるものたちへ
遠い震えがとどくとき
足跡は金にかがやいて
損なわれた門は飛び立ってゆく






戻る   Point(4)