もう一度微笑をくれるよう/松本 卓也
「悩みなんて無いんだろうな」
笑えない戯言で寂しさを紛らわせるたび
誰から皮肉混じりに呟くの声が聞こえた
十年後の展望など描いていない
貯金どころか借金さえある
誰がために働いているかとか
何のために生きているかとか
自問する意味さえ欠片も無い
大切なモノ
捨て切れない願い
頼ってくる小さな命
穏やかな幸福
金に名誉
義務と責任
思い巡らしても
僕には何も無い
本当にそうだったのかすら
思い出せなくなりつつある君の笑顔が
時々瞼に映っては消えていく
生き続けてさえいれば
もう一度があるかもしれないとか
思っちゃったりしてさ
十年近
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