夏こそあはれ/ふもと 鈴
真っ青のプールに浮かび望むのはアウフヘーベン時間よ越えろ
ふたりして分かつ流れに水面ゆれ浮かぶ小麦の肌と心よ
夏空の雲のたもとで愛すべき形なきものあはれ踏みつけ
まぶしさに吐き気もよおし少しだけ死んだ私に蝉の声降る
車窓から動かぬ街を飛び越えて見慣れぬ景色を重ねてしまった
水中に沈みながら現実の境界線をゆがめて遊ぶ
泳ぎ終え頬張る麺のいっぱいにまだまだ生きていけることかも
暗闇に雫をひとつ加えむと平らに見つめる視線の転がる
都会から空気はおろか憂鬱も高原の地にて軽くなりき
土道に足をとられるものだからあえて存在否定しようか
束の間の木漏れに顔を覗かせる西日に瞳は自然と細まる
静寂に高揚すわが心あれば空より他にみるものはなし
白熱球もれる光は白く濁り映す目ふっとうるおしくなる
暗闇にかたぶく光坂道をくだり朝までずっと浮かぶ
気付かずに涼しさ駆ける高原に果てること今近くにありき
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