「パノラマ」/くま出没
スクロールしてゆく 現実が
私のいない現実でもう映画は始まってしまったのだ
カラカラと廻り展開されてゆくその物語に私は加わることが出来ない
空っぽの劇場で
ひとり観客として
例えどのような悲劇へ陥ろうとも私は手助けは出来ない
そして誰かと一緒に笑うことも
そのフィルムを選んだ そのどうしようもなさや受け入れることの
準備をせずに生まれてしまった浅はかさをひとりくしゃり花を食べて笑う
本当なら
劇場中の席に花を置いて
祝福してやりたいのだけれども
涙腺がもはや澱んで
何も視得ない
ただ拍手はきちんとして出てやりたいものだ この劇場を
出られない そして他のフィル
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