オミナエシ/
Etuji
まだ明るい街のうえに
名前をなくした月が銀色に輝いている
オミナエシが咲いている
信号機が青になり横断歩道を渡っていった人は
二度と帰ることはなかった
信号機は宿命のまま明滅している
掟はまだ眠っている
修羅が街路樹のかげで夜をまっている
やがて陽はしずむだろう
おおぜいの人が祭りのように
オミナエシのもとにあつまる
そのやさしさをたしかめると
みんな夜があけるまで
泣きつづける。
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