夏の終わりという駅で/皆月 零胤
疲れ果てて
色褪せた
繁華街の朝を通り抜け
ガラガラの電車の
ドアのすぐ側の席に座り
手すりに頭を預けたまま
揺られる
満員電車とすれ違うたび
何かが足りないような
そんな気がする
大切なものはきっと
いつかの電車の中に置き忘れた
隣から向こう側のドアまで続く空席を見ていると
行き先が何処だったかも思い出せなくなり
堪らずに降りてしまう
あんな青空みたいにはなれない
そう日陰で思っていると
何かが水蒸気で線を引いて
空を横切ってゆく
吐き出した煙草のケムリは
迷わず空へ昇ってゆくけれど
風に流され散ってし
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