夏の終わりという駅で/皆月 零胤
 
疲れ果てて
色褪せた
繁華街の朝を通り抜け

ガラガラの電車の
ドアのすぐ側の席に座り
手すりに頭を預けたまま
揺られる

 満員電車とすれ違うたび
 何かが足りないような
 そんな気がする

 大切なものはきっと
 いつかの電車の中に置き忘れた


隣から向こう側のドアまで続く空席を見ていると
行き先が何処だったかも思い出せなくなり
堪らずに降りてしまう

 あんな青空みたいにはなれない
 そう日陰で思っていると
 何かが水蒸気で線を引いて
 空を横切ってゆく

 吐き出した煙草のケムリは
 迷わず空へ昇ってゆくけれど
 風に流され散ってし
[次のページ]
戻る   Point(18)