彼が君ではない/里欣
る。「痛い」と叫ぶ。もう一回。耐えながら、耳から血が出るのを想像する。江みたい。聞こえなくなるよ、やはりやめる。彼も無理しない。ここも江と似ている。夜のバイキング会場、灰色か、無色な工事現場の中にあった。その後に午後の鼓動。通り向けた道は、晴れやかなに踊る、スコットランドのバグパイプ、パレードみたいなと熱気が周りにあふれている。鮮烈色彩豊かで、動悸の楽しいもの。彼は君ではない。
(『現代詩手帖』2008/九月号新人欄選外佳作)(9/3段落など修正した)
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